林菜都子のバリ島滞在記 – 農園編 Part2

2017.12.14
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こんにちは林です。前回の『林菜都子のバリ島滞在記 – 農園編 Part1』では農園で直面した問題や課題についてお話しをしました。今回はバリで実際に行ったコーヒー生産のご紹介と農園で感じた総括を書かせて頂きます。

 

手作業で生み出されるコーヒー

ここでは水洗式(=ウォッシュト)と非水洗式(=ナチュラル)の2種類の精製方法でコーヒーが生産されています。

今回は農園主のPak Wayanさんと一緒に、澄んだ美味しいコーヒーを作るために水で洗って乾かす水洗式の精製を突き詰めて来ました。

 

▲より甘いコーヒーにするために、赤い果実だけを1粒1粒選り分けます。家族やたまに子どもたちも手伝ってくれました。

 

水洗式の精製では、まず摘んだコーヒーチェリーを選別して一度水で洗いながら、水に浮いてきたものは未熟や虫食いのために取り除き、そのすぐそばに設置されたパルパーと呼ばれる機械で果肉を剥きます。

剥かれて出てきた種はビニール袋に詰め、暗所で発酵させます。発酵によって種の周りのベタベタした部分が分解されて洗い落とせるようになり、同時にコーヒーの風味も発酵の過程で作られるんです。

 

▲農園主のPak Wayanさん。選別した熟したチェリーを水で洗います。

 

▲機械で果肉を取るパルピングの工程。中の種だけがザルに出てきます。

 

▲ベタベタした種はビニールバッグに入れ24時間ほど発酵させます。発生したガスで袋はパンパンに。

 

発酵が完了したら水洗いに移るのですが、まだ周りに粘り気が強く付いているため、米を研ぐようにザルに擦り付けてゴシゴシ洗います。

発酵によって種の周りのベタベタがかなり落ちやすくはなっています。使うが汚いと味も汚れてしまうので、綺麗な水を使うように、純度も測定しながら試しました。

 

▲水洗いの様子。機械はないのでここでは手で洗いますが、かなり重く体力勝負でした。コツは「米をとぐのように」。

 

▲ちなみにこの時、種の周りについている粘液(ミューシレージ)が服に着いて茶色くなると、なかなか落ちません。なので、皆さん作業用に着替えをします。私のTシャツはミューシレージだらけになりました。

 

ようやく洗い終わったコーヒー豆はいよいよ乾燥の工程に移ります。洗うだけで数時間もかかる非常に大変な作業でしたが、人の目で見て、手で感触を確認しながら進めるので、素晴らしく綺麗に洗いきることができました。

綺麗に洗うことで、コーヒーにした時の透明感も上がります。その大切さを農園の方々が理解してくれたことが一番の収穫でした。

 

▲この夏に完成した新しいグリーンハウス。

 

▲グリーンハウスの中の乾燥台。現地では「パラパラ」と呼びます。

 

洗い終わったコーヒー豆はパラパラと呼ばれる乾燥のためのベッドに薄く広げられます。暑く通気も良いため、通常は2週間ほどで乾燥は終わるのですが、今年は悪天候で1ヶ月かかっても乾燥しないこともありました。

気候変動によるコーヒー生産への影響はいたるところにあります。

 

▲洗いたてのコーヒー豆。

 

▲乾燥中のコーヒー豆。色はだんだんと白くなっていきます。

 

 

一方で非水洗式(=ナチュラル精製)では、コーヒーチェリーを水で洗うところまでは水洗式と同じですが、浮いてきたものを取り除いたらそのまま乾燥台へと広げるだけのとてもシンプルな作業です。

乾燥しきったら種を取り出すのですが、実を剥くまで中の豆の様子がわからないのと、皮が硬くなるので脱穀時に豆が破損しやすい問題があります。

簡単な作業な一方、正確なコントロールはとっても難しいです。雨が多いバリではなおさら水分量の調整が大変です。

 

▲ナチュラル精製で乾燥中の様子。色は黒くなり、ドライプルーンのような味わいで甘いです。

 

そして、どちらの精製で進めてもこの後は脱穀して中のコーヒー豆を取り出します。脱穀は機械で行います。

バリでは脱穀機をシェアして使っているため、なかなかタイミングよく使えないことも多く農園主のWayanさんも困っていました。

 

そして、脱穀して終わりではありません。脱穀したものからさらに、欠点のある豆を取り除く作業が始まります。

テーブルにコーヒー生豆を並べ、色や形で問題があるものを手作業で取り除いていきます。これが本当に本当に骨の折れる作業で、1日8時間この作業を続ける日もありました。

ただどの作業も、おしゃべりしたり、おやつタイムがあったりしてとても楽しい時間でした。

 

▲出荷前の生豆の選別はちゃぶ台に広げて作業。

 

ピーベリーの不思議

ピーベリーとは別名「丸豆」と呼ばれる、チェリーの中に通常2粒ある種が1粒だけになっているコーヒー豆のことです。

全体の3〜5%の割合でしか収穫できないとも言われ、通常の豆より高額で取引されるのですが、今年は少なくとも15〜20%がピーベリーでした。

片方が死んでしまうからでしょうか。悪天候による雨や気温の異常が原因の1つかも知れません。

 

▲沢山あったピーベリー。丸っこい形。風味も濃厚なことが多いです。

 

この悪天候によって全体の収穫量や品質は下がってしまいましたが、その代わりこのピーベリーは増えました。雨は脅威ですが、ピーベリーは通常より高値で取引されるのでその点ではバランスが取れていますが、農家の総収益で見ると、やはり落ちてしまっています。

 

廃棄、返却の豆の行方

今年は悪天候のため滞在先の農園ではチェリーの収穫量が足りず、他農園からもチェリーを購入することになりました。

購入時にチェリーが詰まった袋をチェックはするのですが、表面だけいい状態の熟したチェリーが並んでいることが多く、中はほとんど使えない未熟な緑色のチェリーばかりのこともありました。

 

▲買い付けた最初のコーヒーチェリー。未熟なチェリーもけっこう混ざっています。

 

しかし、自国でのコーヒーの消費も多いバリではどんな豆でも買い取ってくれる業者もいます。私たちスペシャルティコーヒーショップとしての使い道ではなく、インスタントコーヒー含め様々なコーヒーへの使い道があります。

未熟でも欠点でもなんでも、通常より少し安い程度の価格で買い取ってくれるため農家は損害を抑えることができます。他の地域の農園ではまた流通の形も違うと思いますが、この点はバリのいいところだと思います。自国消費、そしてグレードの低いコーヒーの使い道の大切さを肌で感じました。

 

▲従業員の休憩中。自分たちのコーヒーを飲んでいます。

 

 

コーヒー農園は農業。特別じゃない。

これまで、コーヒー農園での生産の様子や取り組みを紹介してきました。

私はコーヒーに携わる身として、農園を経営するということは、何か強くて特別な気持ちがあるのではないかと思っていました。しかしそれについて尋ねると、農園主のWayanさんは私に、家族と一緒に働けることがどれだけ嬉しいか、質の良いコーヒーを作って農園を大きくしたいという夢や、できた資金で今後は設備を充実させたい、そんな想いを語ってくれました。

 

ただ彼らはコーヒーが好きなのです。そしてその仕事は明確に1つの農業なのです。

 

今回出来上がったコーヒーはテイスティングをしながらまた来年に向けてフィードバックを繰り返します。少なくとも昨年までよりかは劇的に、甘くて透明感あふれるコーヒーができました。

気候変動という大きな壁はありますが、バリ島でコーヒー生産に取り組むWayanさんの農園を私たちは全力で応援しています。

 

そして、Wayanさんから来年もくるかと連絡をいただきました。収穫期の始めに咲く花の蜜をぜひ私に飲んで欲しいと言っています。

 

私もまた彼らに会えることを、心から楽しみにしています。読んでいただきありがとうございました。

 

▲Wayanさんが送ってくれた農園の写真。今度は花が見えたらいいな。

 

 

林 菜都子

LIGHT UP COFFEE