コーヒーの知識 Vol.3 – スペシャルティコーヒーができるまで 後編

2021.02.11
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生産地でつくられたコーヒー生豆。そこから私たちのもとに渡って、美味しいコーヒーとなるまでの買付、輸送、焙煎、抽出の工程についてご紹介します。

 

買付

乾燥が終わったコーヒー豆にはパーチメントと呼ばれる薄い皮がついています。これをつけた状態で保管した方が品質は守られますが、どのタイミングで脱穀するかは生産者の販売タイミングによって異なります。基本的にはすべてのロットが出揃ったら輸出業者の手で脱穀され、生豆が小型焙煎機でサンプルローストされ、バイヤーとテイスティングした後オーダーを受けたり価格の交渉を個別に行ったりします。地域でオークションが開催されている場合は、特別なロットをオークションに出品したり、バイヤーと直接やり取りしている独立した生産者は、独自にバイヤーを招きテイスティング会を開いたりもしています。

 

 

基本的には美味しさに応じて価格が判断されます。品種の希少性や労働賃金などの条件は生産者ごとに異なるため、価格は生産サイドによって決められることが多く、バイヤーはロットごとのテイスティングでこの価格と品質とを見て購入を決めます。どんな豆を買うか、コーヒーは素材がすべて。その土地や生産者ならではの面白い個性はあるか、飲んだ瞬間の感動はどのような感覚か、その魅力が消費者にどう伝わり得るか。コーヒーショップの美味しい体験は、この生豆選びにかかっているのです。

 

輸送

各生産国でつくられたコーヒー生豆は、焙煎する消費国へと運ぶ必要があります。生産国の輸出業者は商社の役割として、買付けにくるバイヤーと売買契約を結び、植物検疫などの必要な手続きを踏んだ上、船のコンテナに生豆を積み出荷します。私たちコーヒーショップは、直接現地の輸出業者からコーヒー豆を買い付けることもありますが、輸入に関わる手続きは煩雑で費用もかかります。主には、輸出業者よりまとめて輸入した日本の商社在庫の中から仕入れることが多く、スペシャルティコーヒーを専門に扱う商社のほか、今ではアメリカや北欧の生豆商社のコーヒー豆が日本から購入できるようにもなりました。

 

焙煎

焙煎所に届いたコーヒー生豆は焙煎されてはじめて商品となります。焙煎とは、コーヒー生豆に熱を加えて、風味を整える大切な工程。業務用の焙煎機を使い、ロースターごとに定めた美味しさの基準に合わせ焙煎します。

焙煎で一番重要なのは、味の確認と仮説立て。実際に焙煎したコーヒー豆を、カッピングと呼ばれる方法でテイスティングし、豆ごとの良い部分と悪い部分を確認します。

私たちLIGHT UP COFFEEは、豆ごとのフルーティーな個性と、また明日も飲みたくなるようなバランスの両立を目指しています。酸と甘さの感覚、感じられる香り、後味、透明感や香ばしさなどから、改善できるポイントを議論し、次回の焙煎方法の仮説と、焙煎時間や温度などのレシピをつくります。そしてレシピ通りに焙煎を行って、また結果を振り返り、もっと理想の味にするにはとうすれば良いか議論と改善を重ねていくことで、お店が思う「美味しさ」に近づいていきます。 こういった焙煎アプローチはお店ごとに異なりますが、焙煎方法は使う生豆によって大きく決まります。お肉や野菜を炒めるのと同じように、素材が持つ個性をどう最大化するか、それが焙煎であって、決して黄金の焙煎レシピが存在するわけではないのです。

 

 

抽出

コーヒー豆からコーヒードリンクにする最後の工程が抽出です。主な抽出方法はドリップとエスプレッソの2つ。ドリップは粉の重さの16〜17倍のお湯をつかって、重力だけでフィルターを透過させて抽出させる、日本では最も一般的な抽出方法です。豆の個性を活かすよう抽出レシピの調整がしやすく、味わいもクリアに楽しめるのが特徴です。一方エスプレッソは、9気圧というエスプレッソマシンの圧力を用いてドリップコーヒーの8〜9倍ほどの濃度で抽出する方法。美味しいエスプレッソは凝縮した果実のような風味が詰まっておりそのままでも感動的な飲み物ですが、ラテやカプチーノ、カフェモカにもなる、カフェドリンクの根幹になる液体でもあります。どちらの抽出方法も焙煎と同じように、再現性を持たせるために数字を使い検証しています。

 

 

抽出

コーヒーの抽出で使う変数は主に、「豆の焙煎後日数」「湯温」「抽出時間」「粉とお湯の比率」「粉の挽き目」。要素が多く複雑になってしまうので、私たちはレシピがシンプルになるよう固定できる変数を1つずつ固定し、最終的に挽き目だけで味を調整しています。例えば、豆の焙煎後何日寝かせると風味の出方が適切か日々カッピングで判断して、美味しさがピークとなる日数(私たちのコーヒーでは3週間前後)寝かせてから使い、湯温は高温で固定(ドリップの場合沸騰したお湯を常温のケトルに移し92度ほどで使用)、注ぐ時間は1分半ほどで固定し、粉とお湯の比率は濃いめか薄めかどちらの方が個性が伝わるかを考えて豆ごとに16〜17倍の間で決め、最終的な酸味や甘さ、後味や透明感などの味の出具合を挽き目で変える、といったような流れです。

 

 

こういった抽出の調整理論もお店によって独自のアプローチを持っていますが、大切なのは、常に美味しいコーヒーを提供できるようにすること。たまたまの美味しさではなく、どんな豆でもどんな日でも、来てくださるお客様にいつも美味しい体験を届けること。さらには、お店の美味しさを家でも楽しんでいただけるように、難しい感覚的な技術ではなく、わかりやすく再現しやすいレシピになるよう、バリスタは毎日テイスティングし、豆の良さがどう伝わるか考え調整し続けています。